2008年12月12日

はじめに:ARGとは?

初めまして、管理人の山嵐と申します。

この度はARG『異世界物語』にご興味を持って頂き、誠にありがとうございます。

ここではまず、まだ日本では馴染みの薄い『ARG』とは何なのか?をご説明していきたいと思います。



ARGとは「Alternate Reality Game」もしくは「Alternative Reality Game」の略で、欧米では4年ほど前から一般に浸透し始めているゲームジャンルです。

この一大ブームを端的に説明することは難しく、そもそも未だに明確な定義は決まっていないのが現状です。

なのでここでは失礼ながら、私の現時点での認識と好みと目標と理想のままにご説明することにいたします。

まず言えることは、ARGとは直訳すると
『代替現実ゲーム』
なのだ、ということです。

『仮想現実(バーチャルリアリティ)』という言葉は今日一定の地位を確立しましたが、リアリティを求めるという意味では非常に近く、またそれを示現する空間はほぼ真逆、と言える概念です。

つまり、『あるコンテンツに対して、リアリティを追求した自然な導入方法とルールを駆使し、この現実空間・生活時間をゲームの舞台・一部分としてしまおう、という試み全般』のことを指します。

まだまだ理解してもらえないと思いますので、順を追って説明していきましょう。

現時点で展開されているいくつかのARGを構成する要素は、大きくふたつに絞られると思います。

☆ARG要素@『実際に何らかの行動が要求される』

ひとつは、『現実に体を動かすイベント』を用意することでリアリティとする、という手法。最もわかりやすい言葉で言えば『宝探しゲーム』に準じたもの、ということになるかと思います。

実際に行動することでのみゲームが進展するわけだから、よりリアリティがあると言って間違いない、というわけですね。

これは今日本で密かなブームを呼んでいる『あんたがた』という有志参加ゲームや、日本で唯一のリアル宝探しゲーム専門サイト『赤い鳥』が企画する各種イベントがあてはまると思います。

ですが、これはどちらかと言うと副産物的な、日本でのみ比重の大きい概念で、欧米ではこれだけではARGとは言えないというのが一般的な認識だと思います。体を張ったルールのあるゲームは全てARGだというならばスポーツは全てARGになってしまいますし、宝探しをするだけならばそれは文字通りただの『宝探しゲーム』ですから(誤解のないよう繰り返し言っておくと、ARGの定義は未だありません。『あんたがた』は宝探し的要素が非常に強いですが、次に述べるもうひとつの要素も積極的に取り入れようという姿勢がほとんどであり、ARGだと自認している以上立派なARGです。『赤い鳥』はそもそもARGを名乗ってはいませんが、やはり見る人によればARG的であるとは言えると思います)。

☆ARG要素A『作品世界観への徹底的な没入』

もうひとつ、最も重要な要素は、『参加者にそれがとあるコンテンツの一部分なのだと認識させない(あるいは知らんぷりして現実そのものだとしてみんなで楽しむ)』ことで純粋なリアリティそのものを追求する、というところにあります。

誤解を恐れず言うのなら、壮大で本気な大人の『ごっこ遊び』と言えるかと思います。ゲームと限定しないのであれば、この手のプロモーションはたくさんあります。最近のタイトルで私がとっさに思いつくのは、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のオフィシャルサイトが作中の重要な日付ごとにリアルタイムで変化したことなどが挙げられるでしょうか。ちなみにご存知でない方に簡単に説明すると、このサイトは作中の高校生たちが部活動『SOS団』の宣伝のために立ち上げたホームページ、というコンセプトになっています。主人公キョンに扮したメールも数通展開されました(その後一切音沙汰無いですね、アニメ新シリーズが始まるころにまた復活するんでしょうか?)。キーワードを探して隠されたメッセージを読み解くようなギミックだけ見れば、十分ARGそのものであったとも言えると思います。

こちらの例としては、今年発売され展開された日本初の商業ARG『名探偵コナン カード探偵団』が挙げられます。

ただし、より重要であるとは言うものの、@と同様にこれだけではARGとしては物足りないと言えるでしょう。日本唯一のARGポータルサイト『ARGFAN』のカード探偵団に対する評価も「これはARGではなくメールゲームだった」とするものでした(もちろん意見は様々です)。

このように比重は様々ですが、これらふたつの最低条件がそろって初めてARGであるとする、というのが私の今の見解です。実際今まで展開されたARGと呼ばれるイベントのほとんどはこのふたつの要素によって構成されていて、北京オリンピックとマクドナルドのプロモーションとして展開された『The Lost Ring』などはこれらがバランスよく配置された作りになっていたと思います(シナリオ概要:パラレルワールドの人間が現実世界に迷い込み、助けを求めてYou Tubeに動画を上げた(ARG要素A)→助ける方法は各地の有志が集まってオリジナルのスポーツを行い、世界のどこかに出現するリングを探し出すこと(ARG要素@))

私は自ら勝手に創りあげたこの大前提に則って拙作『異世界物語』を企画しました。特に要素@に関しては世界初のギミックを取り入れる予定です、ご期待下さい。ちなみにAに関しては大いなる『矛盾』と『トリック』が隠されているのですが、詳細は後述いたします。

どちらの要素にも言えることは、『文化作品のより高次なリアリティをゲーム的手法に求めている』ということ。そしてそれはぶっちゃけてしまえば必ずしも真新しい概念ではない、ということです。

特にIT業界では顕著な傾向ですが、それまで目立たなかったサービスや技法などの『何か』に名前を付けた途端、大きな文化のうねりとして台頭することは近年よくある現象です。あまりに世の中の変化が速すぎてネーミングが追いついていないこともその一因なのでしょう。少し専門的になりますが『ブログ』や『Web2.0』や『Ajax』などが代表的な例ですね。

今までの説明で察しがつく通り、ITと非常に親和性の高い分野であることも相まって、ARGにもこれと同じことが言えるのではないでしょうか。

☆ARG要素(番外)『ファン心理を利用した新時代の広告手法』

さらに付け加えるなら裏の要素として、これらARGを開催する側は(特に企業である場合)『広告媒体として優れていること』をもうひとつの柱にすえているのだろうと思います。

またしてもコアなオタクの話題で恐縮ですが、ニュースでも取り上げられた埼玉県鷲宮神社へのアニメ『らきすた』ファンのいわゆる『聖地巡礼』が町おこしの大きな収益になっている(いわゆる『萌えおこし』)ことはご存知の方も多いと思います。こういった取り組みはほかにも『兵庫県西宮市(涼宮ハルヒの憂鬱)』『長野県木崎湖(おねがいティーチャー&おねがいツインズ)』『岐阜県白川郷(ひぐらしのなく頃に)』など枚挙に暇がありません。

これらの現象は何も日本のオタクに限ったことではなく、ARGにおいてはむしろより激しくエキサイトしてしまう人間がやはり欧米にもたくさんいます↓
虚構が現実を侵食する「代替現実」ゲームが人気
(記事最後4行を参照)

そう、とあるコンテンツに心底惚れたファンは、フィクションだけではもう満足しません。彼らは物語の舞台に『自ら足を運び』(ARG要素@)、「登場人物と同じ場所に立ちたい」「彼らとのコミュニケーションを疑似体験したい」「何か非現実的なことが起こるかもしれない」と、『リアルとフィクションのフュージョンを期待』(ARG要素A)します。

いやらしい話になりますが、そういったディープなファンがコンテンツの配信元にとって『上得意様』であることは言うまでもありません。そんな上得意様をマーケティーズによって意図的に大量に作り出せる手法、それこそが企業にとって重要な『ARG』です。だからこそ今、ARGはこぞって映画やゲームのプロモーションに使われだしています。

もちろんARGとしての水準をより高めるにはさらに、リアルタイム性であるとか、主催者と参加者の双方向性であるとか、参加者同士のコミュニケーションや競技性であるといった要素が必要になってくるのは他のネットゲームやサービス・コンテンツと変わりありません。こちらのギミックをより主要な要素とする捉え方も多いとは思いますが、これらはARGにおいては全て私が提唱する二大要素を追求するためのものであると考えたため、今回はこのような形で説明させて頂きました。



…さて、長々と説明してきましたが。

来訪者の中には、ひとつの疑問が浮かび上がった方も多いのではないでしょうか。

これはARGが抱える大きなジレンマでありまた興味深さでもあるのですが、原則として「これからARGやりますよー!皆さん集まってくださーい!」と呼びかけるARGはありえません。それがオルタネイトリアリティ「ゲーム」だ、と明言した時点で現実社会と融和するかのようなリアリティは望むべくもないからです。何か独立した(しているように見せかけた)コンテンツがあり、それを現実のものだと思い込んで追いかけ続けた結果、それとわかるものがほとんどなのです。だからこそARGは欧米において『ヘイロー』や『バットマン』、『Windows Vista』や『北京オリンピック』など名だたるコンテンツとコンビを組んできました。さらに言うなら最後までARGだとわからなければモアベターなのでしょう。しかしそれでもまだベスト(理想)ではありません。

…ところが、今、「ARGですよー!集まれー!」と声を大にして宣伝している大馬鹿ARGがあります。『異世界物語』とかいう日本初を謳う同人ARGです。一体何を考えているのでしょうか。おそらくARGの何たるかをわかっていないアホンダラが主催しているのでしょう。

…果たして『理想のARG』とは何なのか?『異世界物語』を通じて私もひとつの答えに挑戦してみたいと思います。詳しくはイベント終了後にまた書き記したいと思いますが、それが成ったときこそARGは単なるゲームでも広告手法でもなくなり、『僕たちのリアル』になるんだと思います。

最後に、ARGを理解するために役立つかもしれない各種記事リンクを付記しておきます。

ブレイク寸前の”ARG”作品! ネットを駆使するカードゲーム『名探偵コナン・カード探偵団』
いよいよ日本上陸をはじめた「ARG」って何だ?
賞金20万ドル! 代替現実ゲーム『Perplex City』の行方は?
新しいゲームの形態“ARG”って?
ARGという,新ジャンル
リードデザイナーに聞く、史上最大規模の最新ARG「The Lost Ring」
「代替現実ゲーム」(ARG)が日本で認識されるか?
【DiGRA JAPAN 公開講座】10/31「ひぐらしのなく頃に」レポート
ARGとしての小説
慶應義塾大学経済学部武山研究会(KEG):ARG班
Operation: Sleeper Cell: がん研究支援のためのARG
An alternative way to play with real-world problems
Wearable game weaves clues into cloth

…長文失礼致しました。いかがでしたでしょうか?

これがARGです。(わかるかー!)
posted by 山嵐拓夢 at 21:40 | ARGメッセージ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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